妊娠という新たな命を授かった時、
喜びだけでなく不安や恐れなど、喜びとは相反する感情が湧き起こることもあるでしょう。
妊娠期間中はいつもならやり過ごせることが気になったり、
些細なことでナーバスになることもあります。
精神面だけでなく肉体面も調子の良い時もあれば悪くなることもあるでしょう。
そんな時にアロマテラピーという植物の香りのエネルギーは
妊婦さんはもちろんのこと、妊婦さんを支えるパートナーの緊張も解き放して、
家族の絆をより深めてくれる助けになるはずです。
けれど、妊娠期間中はとてもデリケートな状態です。
安全に安心してアロマテラピーを楽しめるように
エッセンシャルオイルの扱い方、選び方に十分注意をしながら香りを楽んで下さい。
皆さんが心地よく妊娠中のアロマテラピーの楽しむためのヒントをお伝えしたいと思います。
けれどアロマテラピーを個人で楽しむことは全て自己責任の範疇です。
安全なのか、安心して使えるのか、信用できるのか。
ご自身で確認してからお使いになられて下さい。
アロマテラピーとは
アロマテラピーとは大きな意味では植物の香りを楽しむことです。
小さな意味では精油(エッセンシャルオイル)を使用することを意味しています。
芳香浴、入浴、ハーブティー、マッサージなど。
香りの楽しみ方はたくさんあります。
お好みに合った方法で楽しんで下さい。
ハーブティーの楽しみ方
フレッシュハーブやドライハーブをハーブティーとして頂く方法です。
ハーブティーは成分があまり強くありませんから、
あまり気にしすぎずに色々なハーブの香りや味をを楽しんで下さい。
もし心配だな…と思う場合は同じハーブティーを続けて飲まないようにしましょう。
色々なハーブを少しずつ頂くようにすれば、同じハーブの成分が多くなりすぎません。
2〜3種類くらいのハーブティーを用意しておくと良いと思います。
妊娠期間向けのハーブティーもたくさん商品化されています。
そういったハーブティーを選ぶのも良いでしょう。
妊婦さんは1日2L以上の水分をとってもらいたいです。
心がけて、たくさん水分を摂るようにしましょう。
ハーブティーだけでなくルイボスティー、マテ茶、たんぽぽコーヒー、
チコリーコーヒーなども妊婦さんには良いです。
妊婦さんはコーヒーや紅茶などのカフェインを避けた方が良いので、飲むものに制限があります。
制限がある中でも色々な香りや味で楽しんでもらいたいです。
私のオススメのハーブティーブランドをいくつかご紹介します。
AMOMA
浅井貴子助産師が監修しているAMOMAのハーブティーです。
浅井助産師は私が生活の木で働いていた18年前も
妊婦さん向けのアロマの活用を伝える活動をされています。
当時から生活の木の商品を監修していたり、商品カタログにコラムを書かれていた事を覚えています。
私がアロマの世界に携わるようになって20年弱ですが、
きっとその前から活動されていらっしゃるのでしょう。
私も妊娠中のケア、出産後の母乳の促進、断乳のためのハーブティーとして助けてもらいました。
マリエン薬局
ドイツと言えばハーブティーです。
人々の暮らしの中でハーブを頂く生活が根付いている国です。
そのドイツで厳しい品質管理のもと製造されている
マリエン薬局のハーブティーはとにかく凄いです。
私も色々なハーブティーを飲んでいますが、
ここまでハーブティーを美しいと思ったことはありません。
ティーバックの中に入った1つ1つのハーブがとにかく美しくて、
丁寧に育てられたものだとすぐに分かります。
その分、値段もびっくりします。
けれどクオリティを考えれば、相応だと実感します。
私は妊娠した友人、体調を崩した友人へのプレゼントとしてよく使っています。
ちょっと自分で買うには高級だな…と思うのですが、プレゼントには最適です。
そして玄人向けかな…
普通、ハーブティーを見て「美しい、感動する」なんて思う人は少ないですものね。
マリエン薬局の”のど飴”も最高に良いです。
できることならマリエン薬局の”のど飴”だけを冬場は使いたい!
でも価格がね…
ハーブティーを購入される機会がある時には一緒に注文するのもオススメですよ。
iHerb
アメリカから個人輸入できるハーブやスパイス、健康食品を扱ったiHerbです。
リタルダンドでもマッサージ後にご提供しているyogi teaも購入できます。
iHerbは紹介コードを使うと割引が適用されるので、ご購入の際にはお安くお求め下さいませ。
紹介コード:HKQ822
商品数も多いのでオススメのハーブティーをいくつかお伝えします。
・オーガニックたんぽぽコーヒー
他にも砂糖なしのピーナッツバターやスパイス、子供・赤ちゃん用の肌ケア用品などあるので
出産後も要チェックです。
精油(エッセンシャルオイル)の楽しみ方
植物の芳香成分を高濃度に抽出したものが精油です。
精油は水に溶けにくく、油に溶けやすい、そして熱によって香り成分が揮発するのが特徴です。
そんな精油を使った芳香浴や沐浴、マッサージは植物の香りをダイレクトに感じさせてくれます。
精油成分は体に吸収されると気持ちを高揚させたり、鎮めたり、筋肉を弛緩させたり…
私たちの身体へ影響します。
体に影響を与えるからこそ、妊娠中の精油の使用は注意が必要です。
妊娠中の芳香浴
香りを嗅ぐ芳香浴であれば、妊娠期間中、どんな精油も楽しめます。
熱や超音波によって空気中に拡散された精油成分は、
私たちの鼻の奥側の鼻腔で吸収され、血液中に溶け、そして体全体へと巡ります。
この香りを室内空間に拡散させて吸収する芳香浴は、体に吸収される精油の量は少ないです。
自分がリラックスできると思う香りを焚いて、自由に香りを楽しんでみましょう。
そうは言われてもやっぱり心配…という方は柑橘系の精油を嗅いでみましょう。
オレンジ、マンダリン、ベルガモット、グレープフルーツ、レモンなどは心を解放させて、
幸せな気持ちにさせてくれる香りです。
芳香浴であれば柑橘精油のもつ光毒性を気にする必要はありません。
妊娠中のラベンダー精油の使い方
アロマテラピーといえばラベンダーと言われるほど精油を代表する植物です。
ラベンダーは通経作用があるため、妊娠中に使いたくても使って良いのか心配になる精油です。
妊娠中に注意が必要なラベンダーを含めて、
芳香浴であれば通経作用のある精油を使っても心配する必要はありません。
ハーブティーにラベンダーが入っていても大丈夫です。
ラベンダー精油を直接肌から取り込むマッサージの時には注意をして使用しましょう。
正産期に入っていれば、ラベンダー精油をブレンドしたオイルで
体をマッサージするのはとても気持ち良く感じるでしょう。
赤ちゃんが降りてこない時、
実際に赤ちゃんを産む瞬間である陣痛から出産の時にも大いに役立ちます。
37週から陣痛中の期間、ラベンダーを含むマッサージオイルで
お腹や背中を撫でてみても良いです。
パートナーに撫でてもらうのも、とても効果的です。
ラベンダーの精油はとても水っぽい精油です。
水に溶けるわけではありませんが、
数ある精油の中でもラベンダーは水中利用の相性がとても良いのです。
正産期に入った妊婦さんがフットバスや全身浴などでラベンダーを使用するのも、
とても心地よく感じるはずです。
そしてラベンダー精油は傷を癒す力も強力です。
帝王切開や出産で傷ついた皮膚を癒してくれます。
(もしも出産で自分の心が傷ついたと感じるならば、産後の使用もとても良いでしょう。)
ラベンダーの精油をマッサージに使う際には必ず真正ラベンダー(true lavender)を選んで下さい。
ラベンダーは種類がとても多いです。
学名がLavandula officinalisもしくはLavandula angustifoliaと記載されているものです。
ラバンディンやラベンサラは妊娠中のトリートメントには向きません。
オーガニックかオーガニックでないかは、あまり気にしなくて良いです。
フランス産、タスマニア産など産地もお好みのものを選んで下さい。
妊娠初期・中期にマッサージオイルとして使用するのは十分注意が必要です。
もし使用する場合は専門のアロマセラピストにご相談下さい。
妊娠中のマッサージ法
肌に直接塗るマッサージは精油成分の濃度が芳香浴に比べて高いため、使用に注意が必要です。
けれど安全性の高い精油を使ってマッサージオイルを使用すれば、とても心地良いものになります。
妊娠中はむくみ、足のこむらがえり、腰の痛み、胃腸の不快感、背中や肩の痛み、
頭痛、気持ちの移ろい…色々な不定愁訴が起こります。
それらにアロマテラピーマッサージはとても良い効果をもたらしてくれるはずです。
セルフマッサージ
マッサージ法には自分で行うセルフマッサージと人の手を借りる方法があります。
セルフマッサージの時には自分の手の力を使うので、ちょっと疲れてしまう時もあるでしょう。
そんな時にはヴェレダのマッサージブラシがオススメです。
私も妊娠中に、このブラシを使ってお尻から太ももにかけて、
首肩腕にかけてをマッサージをしていました。
少し力を加えるだけで、しっかりと圧力が伝わります。
皮膚を擦らないように、多めのオイルを肌に塗布して下さい。
強過ぎる圧力にならないように気をつけましょう。
パートナーによるマッサージ
私は妊娠中、パートナーに行ってもらうマッサージをとてもオススメしています。
赤ちゃんをお腹の中で育てて産むことはお母さんにしかできません。
そんなお母さんへのサポートはお父さんのパートです。
妊娠中は息をしているだけで妊婦さんは疲れるんです。
私のサロンに来る妊婦さんは「特に何もしてないんですけど、疲れちゃって…」と
申し訳なさそうにおっしゃるんです。
疲れるのは当然です。
お腹の中で、常に赤ちゃんを最優先に栄養を送って育てているんですから。
私は妊婦さん達に
「妊婦さんは生きてるだけで大変なんです。
お腹の赤ちゃんを育てるという24時間体制の仕事を1人でして、
何もしてないなんて事ないんですよ。」
とお伝えしています。
そんな妊婦さんにパートナーがしてあげられることの1つがマッサージです。
力強く押す必要はありません。
マッサージオイルを手にとって、自分の手のひらで温めたオイルを
背中やお腹に塗ってあげるだけです。
それだけですが愛する人の手の温かさ、植物の香り、撫でられる圧力によって
妊婦さんが感じる緊張が溶けていくはずです。
胎動がしっかり感じられる週数であれば、
お父さんの手のひらによって気持ち良くなった赤ちゃんが
キックやパンチをしてくれるかもしれません。
プロフェッショナルによるマッサージ
もちろんセルフマッサージもパートナーによるマッサージも良いですが、
プロフェッショナルなアロマテラピートリートメントもとても良いです。
私のサロンでも妊婦さん向けのトリートメントを行っています。
ローズやネロリ、カモミールなど花の精油を使ってマッサージをします。
体調に合わせた香りを調香し、
全身をくまなくほぐす心地良さを感じてみてください。
妊娠中のブレンドオイルの作り方
好みの植物油に0.5%濃度で精油を薄めます。
精油は直接肌に塗布することができません。
必ず植物油に薄めて使用されて下さい。
私のオススメはホホバオイルです。
植物油10mlに対して精油1滴が0.5%濃度です。
そしてお好みに合わせて精油をブレンドされて下さい。
ブレンドオイルをお腹に塗ってストレッチマーク対策にしても良いし、
脚のマッサージでむくみ対策をしても良いと思います。
こめかみに少量塗布して香りを楽しむのも良いでしょう。
妊娠中のブレンドオイルの作り方は
【妊娠中のアロマテラピー】妊娠線対策オイルと手作りブレンドオイルも参考にされて下さい。
ご自分でマッサージオイルをブレンドしたい場合は、
使用する精油を1つ1つ確認して安全に作成されて下さい。
各精油の安全性についてのは
【妊娠中のアロマテラピー】妊娠中の精油の楽しみ方をご確認ください。
精油を購入する時の注意
セラピストであれば精油の扱いに慣れているでしょうが、
初めて精油を使う方は精油を購入する時も注意して下さい。
精油(エッセンシャルオイル)とアロマオイルは別物です。
精油は100%ピュアなものを購入しましょう。
異様に安いものは精油ではありません。
精油には必ず学名、抽出方法、抽出部位が記載されていなければなりません。
ラテン語で書かれた学名があるか、どんな方法で精油が精製されたのかを確認しましょう。
100%ピュア、精油と書かれていても紛い物がたくさん出回っています。
必要な記載があるか確認しましょう。
特に貴重なローズオットーやネロリの精油があまりに安い金額で買えませんので、ご注意下さい。
信頼できるお店で購入されることをオススメします。
生活の木
ニールズヤードレメディーズ
プロナラム
おうち時間をアロマで快適に【フレーバーライフ】
シトラス系(柑橘)の精油の注意点
妊娠期間全てにおいてお使い頂ける精油です。
(※マッサージにおいては中期以降)
柑橘系の香りは温かさを伝えてくれるオイルで、
緊張を緩めて、気持ちを元気にしてくれます。
オレンジ、ベルガモットは優しさを、
グレープフルーツやレモンは活力を与えてくれるような香りです。
上記4つのオイルは光毒性と言って、
肌に塗布した後、紫外線にあたると色素沈着や肌の炎症を起こしやすくなります。
柑橘系オイルをマッサージに使用した後は太陽の光に当たらないように気をつけましょう。
妊娠中は特にメラニンをつくる働きが高まるので、より注意しましょう。
柑橘系のオイル(レモングラス以外)は劣化が早いことも特徴です。
開封後6ヶ月を目安に使い切るようにしましょう。
消費期限が短いので購入する時は小さいサイズで買うことをオススメします。
とても肌が弱い方は柑橘系精油はマッサージに使用するのを避けた方が良いです。
塗布した後、ピリピリする感覚がある場合は水で洗い流します。
レモングラスだけは同じ柑橘系の香りでも抽出方法が異なります。
光毒性もなく、上記の注意事項は当てはまりません。
レモングラスだけは別枠として捉えて頂く方が良いと思います。
妊娠中の入浴法
水やお湯に体を浸ける方法が入浴法です。
全身浴と体の一部分を浸ける部分浴があります。
精油を数滴垂らしたり、ハーブを入れる方法があります。
ハーブを使った入浴法
日本では菖蒲湯や柚子湯など、伝統的に植物を使った入浴法が既に文化として継承されています。
フレッシュハーブやドライハーブを使用する場合は、
キッチンで煮出して、そのエキスだけを入れるようにしましょう。
フレッシュハーブもドライハーブも40度程のお湯の温度では有効成分が溶け出ません。
ハーブティーを入れるように高温のお湯で煮出すか、蒸らすようにして抽出しましょう。
私は産後、会陰裂傷による不快感を和らげるために
ニンニク、ドライラベンダー、ドライローズマリーを煮出したものを入れた
ハーブバスで傷を癒していました。
『ニュー・アクティブ・バース』ジャネット・バラスカス著によると
ニンニクのエキスが特に良いと書かれています。
ニンニク入りなので煮出す時間が30〜45分と長めです。
本に記載されているハーブリストがニンニク以外、手に入りにくいものなので
自宅にあるラベンダーとローズマリーを使っています。
本に書かれているブレンドとは異なります。
妊娠中の精油を使った沐浴法
精油を使う場合は全身浴なのか、部分浴なのかで使用する精油の量が異なります。
全身浴であれば妊娠中は2〜3滴
部分浴であれば1滴を目安にしましょう。
精油を直接、湯に垂らしても良いですが
精油は親水性ではないので溶けません。
肌が弱い人は植物油5mlに溶かすか、無水エタノール5mlに溶かしてから入れるようにしましょう。
参考文献
『「聖なる香り」サトル・アロマテラピー』
著書:パトリシア・デービス
監修・翻訳:古賀 むつ美
訳:清水 美冴
1997年4月17日発行
ノーベル書房
『妊娠と出産のためのクリニカル・アロマテラピー』
著書:デニス・ディラン
平成20年8月25日 第1版第5刷発行
フレグランスジャーナル社
『ニュー・アクティブ・バース【改訂版】』
著書:ジャネット・バラスカス
訳:佐藤 由美子、きくち さかえ
2009年5月15日 改訂版第5刷発行
現代書館